任意売却にかかる「ハンコ代」とは?
■ハンコ代とは債権放棄の手数料
任意売却の手続きを進める上で、「ハンコ代」というものが必要な場合があります。
これは任意売却に伴い、優先順位の低い抵当権者(後順位の債権者)に権利を放棄してもらうために第1順位の債権者が第2順位以下の債権者に支払う承諾料です。
任意売却では売却する不動産に抵当権が残っていると売買が成立しないため、すべての債権者に抵当権を放棄してもらう必要があります。しかし不動産の売買代金よりも住宅ローンの残債の方が多い場合はすべての債権者に対してお金を返済することが出来ません。そこで「債務を返済することはできませんが、一定のお金を出しますから抵当権を解除してください」ということで支払う抵当権の解除承諾料がいわゆる「ハンコ代」です。
■ハンコ代に決まった料金はない
住宅金融支援機構の場合、第2順位の債権者には30万円もしくは残元金の1割、第3順位には20万円もしくは残元金の1割、第4順位以下には一律に10万円もしくは残代金の1割のうち低い額を適用する、というハンコ代の基準を設けています。
ただし、これはあくまでも「目安」であって、債権者には「ハンコ代をもらって債権を放棄しなくてはならない」という義務はありません。ただ「1円も回収できないよりはいくらかでもハンコ代をもらった方がマシ」ということで債権放棄に応じるわけですが、いくらハンコ代をもらえば納得するかというのは債権者の考え方次第です。
■金融業者は持ちつ持たれつ
任意売却は、利害関係者全員の賛同が得られなくては成立しません。任意売却が成立しなければ不動産は競売にかけられ、債務者が回収できる金額はさらに少なくなります。「ハンコ代」は、不動産が競売にかけられた場合その順位の債権者が回収できるであろう金額(たいていはゼロ円)を上回る金額が設定されるのが常識で、業界の通念としては「高くても100万円以下」ということになっています。
「ハンコ代の額は不満かもしれないが、金融業者同士持ちつ持たれつなのだから、ここはこれぐらいで手を打ってください」という業者同士の暗黙の了解やプレッシャーもあるでしょう。もちろんハンコ代の額については個々に交渉が必要ですが、最終的には感情的なもつれなどがない場合は程々の金額で手打ちが成立します。
なお、こうした交渉の仲介をするのは債務者の責任ですが、債務者が不動産売買の素人である場合は業界の常識や慣習を熟知している代理人を立て、仲介を委託すべきでしょう。ハンコ代は額面以外に金融業者同士のメンツや力関係、心証が現れるデリケートな数字だからです。