■任意売却が成立する条件とは?
任意売却は債務者と債権者のすべての合意の上に成り立つ債務整理法です。成立させるためにはいくつかの条件が必要となります。
■返済の滞納と期限の利益の喪失が必要
任意売却の前提条件として、「借入金の返済滞納」と「期限の利益の喪失」のふたつが挙げられます。
まずひとつめの「借入金の返済滞納」についてですが、なぜこれが任意売却の条件になっているかというと「住宅ローンの滞納もしていないのに、自宅を売却する必然性がない」ということです。もちろん「今月はなんとか払えたが、来月払えるアテがまるでない」といったような状況では債務者は任意売却を考えるでしょう。しかし債権者側の意向としては「そういわずに何とか払い続けてください」ということになり、すんなり任意売却は成立しません。
■任意売却の前にできる交渉
逆に言うと、まだローン滞納前であれば「このままではローンが払えず任意売却をしなくてはならなくなるので支払月額や支払期間などの条件を緩和していただけませんか?」といったような交渉の余地があるということです。うまくすれば任意売却を避けられるかもしれません。
■期限の利益の喪失とは?
「期限の利益の喪失」というのはちょっとわかりにくい言葉ですが、住宅ローンというのは「一度に住宅を買えるほどのお金が準備できないので、いったんまとめてお金を貸してください。その代り元金に利息を加えて月々返してゆきます」という金融機関との交換条件による合意の上の借金です。つまり「お金と時間を引き換え」にしているといえます。
月々きちんとローンを返済していれば、金融機関は「残りをまとめて払ってください」とは要求できません。これが「期限の利益」つまり返済期限の猶予をもらっているということです。
ところがローンを滞納すると金融機関は「約束が守れないなら残債を一括で返済しろ」と迫ってきます。債務者は債務不履行で「期限の利益」を失ってしまったということになり、これが任意売却の条件となります。
■関係者全員の合意が必要不可欠
「借入金の返済滞納」と「期限の利益の喪失」のふたつが揃えば任意売却が成立するわけではありません。住宅ローンで建てた家の場合、その家と土地には金融機関の抵当権が設定されています。また固定資産税や社会保険料などの滞納があると自治体から不動産に対して差押がかかる場合があります。
差押えられた不動産は売買できませんし、抵当権の設定された土地をまともな値段で買う人もいません。そこで債権者と差押や抵当権の解除の合意をして、不動産の市場価値を復旧させてから任意売却を行う必要があります。